「朝シャン」の盛衰

「朝シャン」の盛衰

水・エネルギー消費量を押し上げた朝シャン
清潔ブームを象徴するのが「朝シャン」ブームでした。女子高生を中心に、毎朝出かける前に髪を洗う習慣が広まりました。

始まったのは85年ごろからで、「朝シャン」というネーミングを考えた資生堂が流行語大賞の表現賞を受賞したのが87年です。髪の毛の「清潔」が強調されて、少しでもにおったり、ベとつくことが嫌われ、若い女性ばかりでなく若い男性にも広がりました。

企業は競って朝シャン専用洗面台や吸水性を売り物にした朝シャンタオルなどの商品を発売しました。

87年の東京ガスの調査では、首都圏の女子高生に200人中187人が「毎日洗髪」し、そのうち33人は「一日2回」と回答しています。これは社会問題としても取り上げられました。総合エネルギー調査会エネルギー部会の中間報告「エネルギー利用効率化へ向けて」(90年6月)では、朝シャン流行が年間エネルギー消費量を73.5 万キロワット(原油換算)押し上げたとしています。

また90年1月の政府「冬季緊急省エネルギー対策」では、文部省を通じて朝シャンがエネルギー浪費につながることを小中学生に指導することが挙げられました。

大阪府水道部が91年に行った水使用調査では、「若年層の朝シャンを中心としたシャワー利用回数の増加」が大きな要因となり、給水量が急増しているとし、86年度と比べシャワー設置率が12.6ポイントあがり、シャワー付き洗面台が7.6パーセント普及し、「入浴以外のシャワー利用回数」が夏は平均週6回であると報告しています。

朝シャンは髪に悪い

こうした朝シャンは、果たして髪にいいのでしょうか。

一日2回も洗うのは明らかに洗いすぎです。回数だけでなく、一回につけるシャンプーの量が多すぎるということもあります。

朝の忙しい時間のため、すすぎが十分でなく、シャンプーが残ってしまうことによって髪にダメージを与えるということも指摘されました。

朝シャンに時間をとられて朝食を摂らないために栄養が不足するということも考えられます。朝シャンがピークを迎えた88〜89年当時の雑誌を見ると、朝シャンすると禿げるかどうかという「朝シャン=ハゲ論争」が誌面をにぎわせています。

そして、90年からは、「ダメージヘア」を取り上げた記事に移って行きます。結局、「朝シャン=ハゲ論争」は決着がつかなかったようですが、その後、朝シャンやら毎日髪を洗う習慣は着実に減り始めました。

朝シャンは減少したが

花王情報部の調査によると、女子高生で朝シャン派は88年が10.1パーセント、89年は14.1パーセントと上昇したものの、90年には13.5パーセント、91年には12.3パーセントと下降していきます。洗髪頻度も、「一日に1回以上髪を洗う」という人は88年が41パーセント、92年は56パーセントと減少しました。

シャンプーの出荷量も、通産省の生産動態統計によると、89年の約10万9000トンをピークにその後減っています。これは朝シャンしていた本人たちが、髪の毛のダメージを実感したためでしょう。

若い女性の関心は「ダメージヘア」「ヘアケア」へ移りました。化粧品メーカー「ドクターベルツ」が92年に行った調査では、「シャンプー回数は週4回」が49.2パーセントで、「毎日シャンプーすると髪が傷む、ぱさつく」というのが理由としてあげられました。

こうして朝シャンの過剰なブームは終息しました。しかし、いろいろな商品を次から次へと開発する企業にのせられて、髪の毛をいじくりまわすという状況に変わりはありません。

今では、さらさらヘアー、細くて軽い毛が理想とされ、日本女性本来の黒くてしっかりした髪は嫌われています。色も、金や茶のような明るい色に染めることが当たり前となりました。髪にとって受難の時代はまだまだ続きそうです。

自滅した朝シャン

朝シャンブームは一つの欠陥商品騒動も引き起こしました。

「朝シャンタオル」と銘打って発売された、極細の繊維を使った高吸水性のタオル(1500円から2500円程度)です。

小林製薬が88年に最初に発売し、大小さまざまなメーカーが参入し300億円市場にふくれあがりました。ところが、消費者から高吸水性に対する疑問の声があがりました。そこで通産省(現経済産業者)が90年5月から客観的な評価基準づくりを始め、91年2月25日に、吸水性の評価基準を定め、この基準をクリアする製品について「高吸水性タオル(洗髪用)」の統一表示を用いるよう業界を指導していくことを決めました。

吸水速度や吸水量から指数化し、指数値800以上を「高吸水性タオル」と呼ぶことにしたのです。そのときに市販の40銘柄の朝シャンタオルを試験したところ、11銘柄は基準をクリアしましたが、29銘柄は不合格でした。

通常の綿タオルでも指数は約570で、これを下回った銘柄も、17ありました。

新基準を受けて、業界団体の高吸水性繊維製品協議会(39社)は部内に審査委員会を設置、各メーカーが化学繊維検査協議会などで受ける検査結果をもとに、評価基準以上のものについて合格マークを交付していくことにしました。

しかし、朝シャンタオルは社会的信用を失い、朝シャンブームも去って、93年には売上高がピーク時の4割ぐらいにしぼんでしまいました。

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